ぼくにとって
ぼくにとって結婚なんて
ずっと先のことだと思っていた
もっと一人の時間を過ごしたいと思っていたし
その方が楽だと思っていた
あの日も僕は仕事終わりに
一人ゆっくり食事をしようと思って
馴染みのあの店に行った
最初はゆっくりお酒を飲みながら
一人食事を楽しんでいた
後からどんどんお客さんが増えてきて
カウンターに座っている僕の隣にも
一人の女性が座った
初めて来たのか
なかなか店主に話しかけられない様子の女性が
どうしても気になって 思わず声を掛けた
「何を頼みますか?」
するとその女性は驚いたような顔で
こちらを見た
それもそうだよな
いきなり知らない人に話しかけられたんだもんな
でも彼女はすぐに笑顔になり
優しい声で「ありがとうございます」と言った
彼女の注文も無事に終わり
なんとなく一緒に食事をする感じになった
お互いの仕事のこと
地元の話
他愛もない話だったけど
初対面なのになぜだか
話題が尽きることは無かった
居心地がいい
ふとその言葉が頭に浮かんだ
あんなに一人の時間がいいと思っていたのに
とても不思議な気持ちだった
この日を境にその女性とは
何度かこのお店で顔を合わせるようになった
月日は流れ
ぼくとその女性はお付き合いを始めた
これがぼくとぼくの奥さんとの出会い