【ウエディングSTORY】フレンチトースト
まだ小学生だった頃。
土曜日はお昼まで学校で
遅くまで寝ていられるのは日曜日だけだった。
未だに寝ることが大好きで
小学生の頃もそれは変わらず。
遅く起きた朝は・・・なんてタイトルの番組が
テレビでかかっているのをしり目に
二度寝、三度寝するのが好きな子供だった。
母はそんな私を無理に起こしたりはせず
どこかに出かけたりする予定がある「特別な朝」には
決まってすることがあった。
それは、≪フレンチトースト≫を作ること。
バターが溶け、ふわふわのパンが焼ける音
ブラウンシュガーとシナモンの香ばしい香り。
昔は小さなマンションに住んでいたから
ベッドにいても良い香りが飛び込んでくる。
甘いものが大好きな私にとっては
焼き立てのフレンチトーストを食べるためには
まだ眠くたって起きる他選択肢はなくって。
この「特別な日」だけに作ってくれるフレンチトーストが
母の作る料理の中で一番好きだった。
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今日はきっと 人生で一番の 「特別な朝」。
2日前からそれぞれ実家に帰り、家族との時間を過ごすことにした。
やっぱり当日は少し緊張していて
いつも寝坊気味な私も早めに目が覚めた。
一軒家に変わった実家の階段を降り、リビングに入ると
あの甘く、香ばしい、そして懐かしい香り。
父は緊張した面持で式場に持っていくものをまとめ
弟はまだ眠たいのか、目をこすりながらも
スーツに着替えうろうろして・・・
いつもの「特別な朝」の風景だ。
母に
「今日はこれがなくても起きれたよ」
何て笑いながら話す。
「これを作ってあげられるのも、最後かもね」
少し震えた言葉と一緒に出てきた、
いつもより少し焦げているフレンチトースト。
「まだ泣くのは早いよ!」なんて言った私の言葉もかすれていた。
これからは、特別な朝もフレンチトーストがなくても
自分で起きる・・・と言いたいところだけれど
やっぱり朝は苦手だから、隣にいる彼に起こしてもらおっと。
起こしてもらったお礼には
やっぱりフレンチトーストを作ってあげよう。
ね、お母さん。