魔法の音
ある年のクリスマス
まだ幼かった私は
夜のパーティーが待ちきれず
キッチンでご飯の準備をするママの後ろを
ずっとくっついて歩いていた
──危ないから、あっちにいなさい
そう何度も言われて
ちょっとふてくされた私は
リビングのソファーから
ママのいるキッチンの様子を眺めていた
トントントン
グツグツコトコト
ジュージュー
いつもキッチンからは
たくさんの魔法の音が鳴り響く
私はその音を聞くのが大好きだった
だってその音のする後には
私の大好きな料理達が
魔法を使ったみたいに
テーブルの上に並んでいたから
ほらね
やっぱり今日も
たくさんのごちそうが並んでる
いつか私も
この魔法の音を出せるのかな?
ママみたいにキラキラのごちそうを
作れるのかな?
いつかママみたいになれるように
いつもママのことを眺めていた
だから
初めてママと一緒にキッチンに並んだ時
初めて一人で母の日に料理をした時
初めて一人暮らしで料理をするようになった時
初めて彼に手料理を振る舞った時
いつも私の心の中には
あのママの魔法の音が鳴り響いていた
幼い時の記憶
それは魔法のような音
心がほっとする音
優しい気持ちになれる音