札幌での結婚式
ある日彼が言った。
「札幌に転勤する事になった。着いてきてほしい。」
普段は何も決めてくれない彼。
デートの場所も、旅行の場所もいつも私が決めていた。
着いてきて欲しい…ってプロポーズなのかな？？？
はっきりと言ってくれれば私だって決心しやすいのに。
そんなモヤモヤした気持ちを残したまま
私は彼と札幌での新しい生活を始めた。
札幌に来て初めてのお休み。
まずは足りない家具などを見に行くのだと思っていた
だが彼は
「今日は余市にいちご狩りに行こう！」
でも…と言い返そうとしたが、私は言い返せなかった。
彼の手には付箋がたくさん張られた観光雑誌があった。
「富良野にラベンダーをみに行こう！」
「旭山動物園に行こう！」
「大通り公園のイルミネーションを見に行こう！」
「羊ケ丘展望台に行こう！」
北海道の様々な観光スポットを調べてくれる彼。
今までそんな事してくれたことないのに…。
そんな事できる人だったんだ。
今までしてくれなかった事よりも、
今、私を楽しませようと考えてくれることが何より嬉しかった。
そんな彼との生活から１年。
北海道の観光雑誌に載っているあらゆるスポットに行っていた。
そんなある日。
「札幌で結婚式をしないか？僕たちの大切な人達を呼んで」
私は突然の唐突な発言に驚いた。
“結婚式”という言葉の意味に感動する間もなく
“札幌で”という言葉に不安を抱いた。
札幌に住んでいるのは私達だけなのに？
みんな遠い中来てくれるのかな？
ホテルや飛行機の手配はどうするんだろう？
おばあちゃんはだいぶ年だけど大丈夫かな？
そんな不安は一目で飛んでいった。
かれの手には付箋をつけた結婚式場情報誌があった。
どこまでも続く広大な大地
まっすぐに続いていく幅広の道路
寒暖差が作り出す四季折々の豊富な食材
からっとすがすがしい夏の風
迷う事はなかった。
この札幌に私たちの大切な人たちを招こう。
