【ウエディングSTORY】幸せの秘訣
世の中のカップルがどれぐらいの頻度で喧嘩をしているのか
正確な統計データを取ったことがあるわけではないけれど
感覚的にわかる
私たちは喧嘩が多い
「恋人」としての付き合いは長いけれど
両親の「娘」として過ごした時間よりも
彼と「新たな家族」になってからの時間の方がまだまだ短い
お互いにいままでの生活と違うところがたくさんあって
優先順位 こだわり 毎朝のルーティーン
もう!なんで!と思うことばかり
その度にぶつかって 話し合って 時には睨み合って
何度もお互いに譲ったり譲ってもらったりして
なんだかんだでバランスを取りながら一緒に歩んできた
熱くなりやすい
感情的になりやすいのも自覚している
だけどなかなか直らない…
そんな私たちがどうして夫婦として一緒に暮らしていけるのか
それは
私たちは何度でも仲直りできるから
仲直りできる“方法”があるからなのだ
いつものように喧嘩が始まって
お互いに言いたいことをひとしきり言い合った後、膠着状態になって口をきかなくなる時間がある
彼はリビングのソファを陣取っているから私は寝室に籠城する
向こうから謝ってくるまでご飯作ってあげない!お弁当も無し!
そう思って扉を閉めたはずなのに
でも、口をきかないでいると冷静になって
どうして愛し合って結婚したはずなのに、
同じ家の中にいるのに一緒にいないのだろう…と寂しくなって
ふと目に留まった
結婚式のアルバムをめくってみた
凛々しいタキシード姿の彼
友達に囲まれて笑顔で写真に写る彼
優しい眼差しで私の手を取る彼
そして
彼の隣で幸せそうに笑う私がそこいた
記憶に飛び込んで
このときの気持ちを思い出すと
さっきまでの靄がかかったような気持ちが晴れていく
私はアルバムの隣に置いていたパッケージを手に取り
リビングへ向かった
テーブルには汗をかいたビール缶
ちっとも減ってないおつまみ
さっきよりも心なしか小さく見える背中を通り過ぎ
私は取り出したディスクをセットする
彼は何も言わない
私も何も言わない
彼の座るソファに私も身体を沈め
リモコンの再生ボタンを押す
お互いの顔は画面に向けたまま
無音だった空間に優雅なBGMが流れ始める
カメラに向かってメッセージをくれる友人たち
挙式ではずっと緊張していたのに
ウェルカムフードに夢中なお父さん
何日もかけて作ったウェルカムボード
次々と映し出されるあの日の思い出
そして
プランナーさんが選んでくれて
すっかりお気に入りになったあの曲がかかった
階段からのぞくふわりとしたスカート
友人たちの歓声
あのときはすごく緊張していたはずだけど
案外綺麗に歩けていたんだなあと驚いた
そして螺旋階段の中段で私の手を取った彼が
そっと耳元で何かをささやいた
「 」
当然マイクでは拾っていなかったけれど
私はあのときの言葉を覚えている
彼の言葉はずっと心に焼き付いていた
そうだ、こんなに愛されているじゃないか
こんなに想ってくれる人と一緒になれたんじゃないか
一緒にいることが当たり前になっていたけれど
こんなに大切な人と巡り合えて
想い合えて
こんなに幸せなことがあるだろうか
いつの間にか流れていた涙を
彼がそっと拭ってくれる
頬に感じる彼の手の温度は
あのときとまったく変わっていない
「ごめんね」
あの幸せな瞬間を思い出すと、
素直な気持ちでそう口にできた
「俺の方こそ、ごめんね」
喧嘩の数だけ仲直りできる
仲直りの数だけ幸せな気持ちを思い出せる
これが私たち夫婦の“幸せの秘訣”