【ウエディングSTORY】じれったい距離
君との出逢いは 同じ職場だった
たまたま部署を越えての飲み会が開かれたときに
君は僕から1番遠い席に座っていた
美人で楽しくて どうにか君の隣の席に座れないか
ビールを飲みながら考えていたものだ
遠い遠いその距離は 僕たちの心の距離を表していたのかな
職場のプロジェクトチームで君と一緒になり 君と仲良くなった
君へ僕の想いが届いた時は本当に嬉しかった
君と付き合ってから 僕の車の助手席は 君の特等席になり
助手…には程遠く 帰り道はいつも君の寝顔が隣にあったっけ
そして僕たちは一緒に暮らすようになった
結婚式をすることが決まってから
なんだか「あたりまえ」になっていた君のいる生活に
甘えてしまっていた僕に気が付いた
結婚式の準備よりも 仕事を優先させてしまって
君の話 結婚式の話 何も聞こうとしていなかったんだ
どうにか 君と話せるチャンスを…とうかがっていた僕は
いつの間にか 君の話を聞かない夫になっていた
それでも 着々と花嫁になる準備をしている君の
1番のお願い
それは…当日まで花嫁姿を内緒にすること
僕は予想していた
きっと僕のことだから 花嫁姿を見ても
「綺麗だね、似合うよ」 と
買い物に行った日にいつも家でやっている
ファッションショーの感想と同じことしか言えない
だっていつも君は
ちゃんと髪型を整えて 綺麗にメイクをして僕の隣を歩いているから
その君が真っ白なドレスを着た姿さえ想像ができた
そして結婚式当日 その瞬間がやってきた
螺旋階段の上には 僕の妻がいる
フラワーシャワーが舞う中 螺旋階段を降りてくるのは
まぎれもなく 世界中で誰よりも美しい花嫁だった
守るべき人がそこにはいて
涙と共にあふれ出た言葉は
「絶対 幸せにするからね」
声を震わせてなんて恥ずかしいのに
自然とこの言葉が出ていたんだ
君までの距離は 1メートル
手をのばせば 抱きしめてしまいそうなほどに
じれったい距離
