【ウエディングSTORY】私と父の時間
実家にいる時には
「私と父の時間」があった。
もともとの父の印象というのが
良く喋るけど、怒るとすごく怖い人、かつ短気で…
幼い頃にこっぴどく怒られた記憶から
父と話す機会は 元々本当に少なかった。
今になって思うと、父も20歳そこそこの年齢で
子供の扱い方が分からなかったのだろう。
そんな父と私が良く話すようになったのは
とっても単純なのだけれど
テレビ番組がきっかけだった。
小学校高学年になってから
少し夜更かしをするようになって・・・
母は早めに寝る人だったし
弟もまだ小さく、
母と同じくらいの時間にはベッドに入る。
そうなると必然的に狭いリビングには
私と父だけになり
一緒に見ていた深夜番組に私がハマったものだから
そこからなんとなく、会話が増えた。
「今日な、会社で〇〇さんがこんなこと言っていて…」
「休憩中に少し寝ていたらこんなことがあって…」
お喋り好きな父は、お酒を片手に、どこから出て来るのか、というくらいに会社の事、大好きなバイクの事、テレビ番組の事、最近食べたお菓子の事まで…
色んな話を聞かせてくれた。(おかげで父の会社のメンバーのあだ名はバッチリ覚えている)
最初は、しっかり聞いていた訳ではなかったけど…久しぶりだったからか 少しの緊張と共に父の話を聞いていた。
私のつまらないであろう話も良く聞いてくれて
今まで話をしていなかった分、父と話していると
不思議と楽しかった。
私が成人してからは
一緒にお酒が飲めるようになったからか
午後11時を過ぎると、缶ビールを開けた父から
「ビール、少し飲むか?」 と毎日聞かれていた。
きっと今でもチョコレートをつまみにビールを飲むのは
父の影響だと思う。
10年も毎日のように続いた父との時間も
仕事が忙しく夜遅く帰ったときには
ビールの誘いは断って早々に寝てしまったり、
職場の近くに引っ越すことになり
実家を出てからは父と話すこと自体が減ってしまった。
結婚の報告をしに行ったときだって
ご飯を食べて帰ってくるわけで。
考えてみるとこの先、父とのあの時間は過ごせないのかもしれない。
…なんだろうか、この寂しさは。
たかが30分、1時間の短い中で
どれほどの事を話してきたのだろう。
楽しかったことも、腹が立ったことも、覚えたことも…
夫となる彼のこと以外は何だって話してきた。
また、ビールを片手にゆっくり話がしたい。
会社の話だって、車とバイクの話だって、ちゃんと聞くから。
だから、今日この日に 「父との時間」を過ごさせて
一緒の席で料理を食べて ビールを飲みながらくだらない話をして
笑いながら 少し二人で泣いて
今日がちょっと特別なのは
父が普段言わない 自分が思っている事をぽつりぽつりと話し始めたこと
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ずっとどうしたら話が出来るのか分からなかった
あの日から話を聞いてくれるようになって 本当に嬉しかった
話してくれたことは全部覚えているよ
あの時間が無くなってから…やっぱり寂しいけれど、
…愛しているから。幸せになれよ
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初めて言われた言葉に、いよいよ涙が止まらなくって父の肩を借りる
小さい頃は大きくて強くて少し怖いパパだったけれど
今は優しくて暖かい。
わずかな時間だったかもしれない
けれど 何度も過ごした「父との時間」の中でも忘れられないだろう
素直な自分と
素直な父の
「2人の時間」